チョコブラウニーパフェ





最近見つけた少し洒落た喫茶店では各テーブルに一つ水の入った瓶が置かれている。

店員を呼ばなくても水を飲めるから、そのテーブルに店員が来るのは、オーダー を取る時と料理を持って来る時の2回だけ。

後は自分の空間となるテーブルが最近、正守が見つけたお気に入りの喫茶店だ。

「チョコブラウニーパフェ、お一つで宜しかったでしょうか?」
「はい」

いかにも営業スマイルだと分かる少女に返事をする。

着物を着た大の男が一人でパフェを頼んでいる事に、疑問一つ見せない表情は仕 事慣れしているんだろなぁ、と正守は思う。

大抵の店は、正守の格好と注文する品に驚くが、ここの少女はそんな表情はいっ さい出していない。

本当に素晴らしい店を見つけたと思う。

少女の可愛らしいエプロン姿が正守に背を向けると、正守は次に来る少女から料 理を受け取るだけ。

後は一人。

(良守もあんな可愛らしいエプロン着たらいいのに…―)

行ってしまった少女のエプロンを、自分の弟に置き換え想像してみるが、想像し なくても似合っている事は分かっている。

弟は何でも似合うのだ。

(あんなエプロン何処で売ってるんだ?)

グラスに水を入れ、暫し考える。

「お待たせいたしました。チョコブラウニーパフェで御座います」
「あぁ。ありがとう」

正守の考えを遮った少女は注文された品をテーブルへと置き、またもや営業スマ イルを残して去っていった。

落ち着いた照明がやんわりとチョコブラウニーパフェを照らす。

スプーンを持ち、生クリームのたっぷ付いたチョコブラウニーを口に運ぶと、口 内がチョコレートの甘さと懐かしさが広がった。

弟が作るチョコブラウニーよりも劣るが、中々美味しい。

(今度は良守も連れてこよう)

正守の顔を見るだけで嫌がる弟を、無理矢理連れてきたらどんな顔をするだろう か?

正守は自然と笑が溢れた頬を手で隠した。

(一人で笑ってるなんて……末期だな)

食べ終わったパフェ器の中にスプーンを入れ、立ち上がると会計を済ませて店を 後にした。

まだ暑い日差しが坊主頭にはキツいが、正守は目的の場所へと足を運ぶ。
目的地は、さっきの店員が着ていたフリフリのエプロンが売っているだろう店。

それを持って、久々に帰る家に入ったら、嫌がるだろう弟に着せてやろう、とは 思い、着物を着ている自分には似合わないゴスロリショップへと入っていった。

帰省後、正守は嫌がる良守に買ってきたエプロンを着せたが、その後から良守に 口を聞いてもらえなかったのは言うまでもない。
















-あとがき-
良守の事を考えると笑ってしまう兄貴が好きvv
店の店員さんに不審がられてればいいと思う