知らなければ楽園

≪彼≫


彼は、一度社内恋愛を実行した。
しかし、その結果は『別れ』だったらしい。

先輩の言う彼は、どうも社内恋愛者だった。
これは過去形。
今はフリーだ。

もう一度言おう、彼は社内恋愛者だった。

そして、コレが会社の人達の『暗黙の了解』だったという事に気がつく。

新入社員というものは、まったく無知で腹が立つ、と私が思う。

彼に『結婚』『恋愛』の話はタブーだった。
それなのに私は、ズカズカト土足で彼の心に入り込んでしまった。

少しの後悔。

彼の元彼女はまだ、私も先輩も彼も勤めている会社の中にいるらしい。
私も知っているらしい。

先輩は誰か知っているらしい。

私が知る、もしかしたらの彼女の名前を告げると先輩は首を横に振る。

「その人は会社のアイドルだから。多分、一生社内恋愛する事もないし、社内で結婚する事もない。」

っと告げてくれた。

私の勘はたまに外れるらしい。

「教えて欲しい?」

そう聞かれた私は首を横に振る。

彼の過去を知る事は、彼の過去を背負わなければならない。
それに、相手の女の方ともこれからの付き合いを考えれば聞かないほうがいいだろう。

私には荷が重すぎる。

私まで潰れてしまっては意味がない。

もし。
もしも、彼が私に話してくれたとしたら‥‥‥、それはそれで受け止めよう。


この物語はまるでジグソーパズル。

一つ一つのパーツを揃えなければ見る事の出来ない世界。




彼は言った


『恋愛は失うものが多すぎる。』


っと。






ー07.11.10ー