擬似的恋愛物語

女が1人います。
名前は“黒猫”。
もちろん偽名です。

男が1人います。
名前は“ヤン”。
こちらも偽名です。

互いが互いの本名などを知らないまま逢ったお話です。



『黒猫に1回逢ってみたいな』

そんな携帯電話で話した一言から始まったこの恋愛とも言えない擬似的恋物語。

サイト上でのP.Nが偶々“黒猫”だったので“ヤン”にはメールや電話の時、黒猫っと呼ばれた。
ヤンは私の6歳上で、彼女持ちで、浮気性。
私は、好きな人がいるが想いを伝えていなくて、遊び人。
そんなヤンとは、遊びっと言う感覚で接していた。

愚痴を聞いてもらったり、聞いたり。
遊んだ相手の話をしたり、されたり。
どんな事をしたのか、何をしたのか、何人遊んだか‥‥‥などと言う他愛も無い話ばかりしていた。

そんなヤンから、逢って見たいっと言う電話を受けてから一週間後の土曜日。
会社が終わって私は一旦家へと帰り、荷物をある程度まとめたら電車へと乗っていた。

私と、ヤンが棲む街はかなり遠い。
そこで、私達が住む間ぐらいで会おうっと約束をしたのだった。

それが今日。
土曜日の夜から日曜日までの存在してはいけないデート。

目的地まで約1時間弱。
私はそれまでの事を電車の中で思っていた。



私達が共通している事はただ1つ‥‥‥‥‥‥セックス・フレンド所持者。



その1つの事で逢うと決めた。
ご飯を食べ、酒を買い込み、安いラブホテルで飲み明かす。
っと言う、たいした計画も立てないでヤンとは逢う事になった。
勿論、お触りもSEXもない。
ただ逢って、話して、飲んで、寝て、自宅へ帰るだけの安全格安デートプランのつもりだ。

多分、逢えば確実2人は抱くし、抱かれる。

そんな事を思っているうちに電車は目的地へと着いた。

目的地へと着いたら電話をする、っと事前に話してあったので携帯から電話をかける。
数回のコールの後、ヤンが電話に出る。

『もしもし』
「もしもし、今どこ?」
『今、西口改札だよ‥‥‥黒猫は?』
「中央口。黒猫じゃぁ、呼ぶとき恥ずかしいから‥‥‥クロでもネコでも好きなように呼んで。」
『中央口?あぁ‥‥‥じゃぁ、クロって呼ぶよ』
「うん‥‥‥今はどこ?」
『今は大きな時計の所』
「あ、分かった。そっちにいくね」
『うん』

私は電話を切り、大きな時計台の所へと急いだ。
写真では見た事があるが、ヤンとは一体どういう人なのか‥‥‥。
私の横を通る男の人を見て、あれかな?これかな?っと辺りを見回す私は不審者極まりない。

時計台に着くと、それっぽい人がキョロキョロと辺りを見回している。
本当にヤンなんだろうか‥‥‥?
そう思い私はヤンへと電話をかける。

トゥルル‥‥‥トゥルル―‥‥‥

「『はい』」

ヤンと思われる男の人と、携帯越しのヤンの声がダブる。
やっとヤンに逢える事ができた。
そう思うと、私の顔は無意識に笑っていた。

「着いたよ。時計台の下にいるから」

電話は切らずに、ヤンの方向を向き手を振る。
そして、ヤンが此方を見た時

初めて私達は出会った‥‥‥―。





「『やっと逢えたね』」





逢ってはならない恋人同士








ー08.09.15ー