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広い世界の中 出会ってはならない2人の男女が出会った。 だから この物語は生まれなのだけど‥‥‥―。 「はじめまして」 「はじめまして」 お互いが緊張しているのが手に取るように分かる。 だが、お互いの体の距離はとても近い。 「じゃぁ、とりあえず晩御飯食べに行こっか」 ヤンは私の肩をポンッと叩くと、コッチだよと言う様に誘導してくれる。 私はそんなヤンにトコトコと着いて行った。 ヤンが連れて行ってくれたのは、13階建ての1番上にあるお好み屋さんだった。 ここは夜景が綺麗で、デートスポットなんだ、と話しながら笑う。 デートスポットにカップルではない男女が座る。 座った席は店の一番奥。 誰見も邪魔されず2人だけの世界で私達は話した。 家族の事。 彼女の事。 セフレの事での相談。 将来への不安。 冗談。 恋愛話。 趣味。 ご飯の感想。 そうして時間はあっという間に10時を回っていた。 「ラブホは10時半からチェックインだから‥‥‥もうそろそろ行こっか」 そのヤンの一言で会計をさっさと済ませると店を後にする。 店を出て地上に降りるとコンビニへと入った。 もちろんお酒を飲むためにお酒を買いにきた。 好きなお酒を好きなだけ籠に入れている最中、外は大雨に変わっていた。 まるで私達の罪を洗い流すかのように‥‥‥。 それは私達の身を隠すかのように‥‥‥。 「雨‥‥‥大分降ってきたね」 そう私がポツリっと話すと、ヤンはレジの横に売れていた安いビニール傘を即買いし、私の手を握ると雨が降る街中へと歩き出した。 「ちょっと我慢してね。ホテルは直ぐソコだから」 ヤンの言ったとおり、ホテルはコンビニのすぐ近くだった。 ホテルへと入ると従業員が出てきて、清掃中なのでしばらくお待ち下さい、っと言って小さな控え室へと通された。 「雨、まだ降ってるね」 「そうだね」 そう言って、ヤンは私の肩に手を回しギュと私を抱き寄せた。 私はその温もりに頭を預けてヤンに体を倒す。 小さな控え室にはテレビがあり、どこか遠くの海外旅行の放送が流れていた。 私達はそれを見つめながらクスクスと笑いあった。 「旅行に行きたいな」 そう私が話すと、ヤンも頷いた。 「今度は何処か遠い所まで旅行してみよっか」 「彼女さんは?」 「友達と旅行するって言うよ」 「ヤンの地元にでも旅行しよっか」 「‥‥‥それはバレるから駄目だよ?」 「クスクス‥‥‥冗談だよ」 クスクス笑いながらギュッと抱き合う。 そして、部屋の準備が出来たと電話が鳴り、私達は部屋へと入った。 部屋に入ると、その小ささに驚いた。 私の部屋の2倍ぐらいの部屋しかない。 部屋にあるのはベットと、ベットの下側にあるソファーと机、風呂、トイレのみ。 まぁ、ラブホとしての機能は果たしているから文句はないのだけれども‥‥‥。 「風呂一緒に入る?」 ニヤニヤとヤンが濡れた服を脱ぎながら私に話しかける。 私はバスローブを手に取るとヤンへと渡し、首を横に振る。 「先にさっさと入っちゃいなぁ」 「クスクス‥‥‥はぁい」 2人でラブホに居るのに一緒にお風呂にも入らないの?っとブツブツ言いながらヤンはお風呂場へと消えていった。 ヤンがお風呂に入っている間、私は濡れた服を脱ぎバスローブへと着替える。 そして、何気なく眼に入った店のシステムや、オプション表を眺めたり、テレビをつけたりしていた。 10分もたたないうちにヤンはお風呂から上がり、私が交代でお風呂へと消えていく。 「覗いちゃだめだよ」 笑いながらそう言い残し私はバスローブを脱いだ。 お風呂には湯が張っており、軽く汗をシャワーで落とすと湯船の中へと入った。 温度は丁度よく、危うく中で眠りになってしまい慌ててお風呂から出る。 体を拭き、さっき脱いだバスローブを着ると、熱気が篭るお風呂場から出た。 「はぁ‥‥‥涼しいぃ」 お風呂場から出ると、部屋はクーラーが効いて火照った体には心地よかった。 ヤンが座っているソファーの横へ私も座った。 「さぁて、クロもお風呂から上がったしお酒タイムといきますかぁ」 そう言ってヤンは、買ってきたお酒を袋からガサゴソと取り出し私へと差し出す。 「乾杯ぃ」 「乾杯ぃいぃ」 カンッと乾杯をしてお酒を口にする。 程よいアルコールが体に沁み、また冷たい水分が熱かった体を冷ましてゆく。 「ふ、ふぁ―‥‥‥美味しいぃ」 「クロ‥‥‥その言い方オジサンだよぉ」 「失礼なッ!!まだ未成年だぞッ!!」 「未成年がお酒を飲んで‥‥‥悪い子だぁ」 そう言うとヤンは私に抱きついてきた。 もともとハグは嫌いじゃなかったし、避ける理由もないので素直に抱かれる。 ヤンはそれに気を良くしたのか、私のお腹を触り始めてきた。 「こらッ!!!乙女のお腹は触るでない」 「あぁ‥‥‥これは失礼した。手が勝手にねw」 クスクスと笑いながらヤンと私はお酒を飲む。 そして、さっき私が見ていたこのお店のオプション表をヤンが取り出してきて私に見せた。 そこに載っているのは無料コスプレレンタル表だった。 「んん?どったの?コレ着たいの?」 「俺が着たいんじゃないよッ!!」 「なぁんだ‥‥‥似合うと思ったんだけどなぁ」 「似合わないよッ!!って、違う!!早飲み対決しない?」 「早飲み対決??」 「うんw負けた方がコレのどれかを着る事ww」 「‥‥‥うぅん、いいよ!!その勝負乗ったぁw」 この時の2人ともの思考回路はおかしくなっていたからできた事だろう。 ヤンと私は飲みやすそうなお酒を選ぶと蓋を開けた。 私が選んだのは果実酒。 ヤンが選んだのはビール。 明らか私の選んだ方が飲みやすい。 「いっせいのぉで、で飲む事ね」 「はぁい」 「じゃぁ‥‥‥いっせいのぉで‥‥‥」 ゴクゴクゴクゴクゴクゴク‥‥‥ッ 「‥‥‥はいッ!!俺の勝ち」 「‥‥へッ!?」 ヤンは私が半分も飲まない内に全部飲んでしまった。 もちろん不正などしていない。 私の横でヤンはルンルンとしながらコスプレを選んでいる。 悔しかった私はヤンに八つ当たりの軽いパンチをした。 「あははははwwさぁ、これ頼んだからね」 ヤンが頼んだのは黒のミニスカートメイド服だった。 本当はナース服や、際どいレースクイーン服などもあったのだが、私が猛反対したのだ。 服が部屋へと着くと、早速着替えたのは‥‥‥ヤンだった。 届いたメイド服は伸びる生地だったので男のヤンでも着れるのでは?っと言うと、ヤンはすんなり着てくれた。 そして、あっさり着こなしていたので私は写真を数枚とってベットの上で爆笑していた。 「うぅ‥‥‥クロも着てよ」 「はいはい」 そして今度は私がメイド服を着た。 ミニスカートがとてつもなくミニでパンツが見えそうだったのが少し恥ずかしく直ぐにソファーへと座る。 そうすると、ヤンも私の横に座った。 2人の距離は先程より少し近め。 座ったまま片手で体を支えるような前屈みで私が新しくお酒を取ろうとすると、ヤンが私の支えていた手を取り、バランスのとれなくなった私はヤンの足へと崩れるように倒れた。 「ビ、ビックリしたぁ‥‥‥」 「あはは‥‥‥ビックリしたぁ?」 「ビックリするよッ!!!」 まだバクバクいっている心臓に手をやり呼吸を整える。 するとヤンの手がまた私のお腹へと下りてくる。 「あぁ!!こら‥‥‥ッ!!!肉を摘むな!!」 「んん‥‥‥なんとも言えないこの弾力ww」 「お兄さん!!ここは有料ですよ!!」 「マジでか!?」 スススッと手を引っ込めたヤンに、フッと安堵の溜め息をついた。 ヤンはどうもお腹の肉を触るのが大好きらしい。 彼女のお腹もこうして触るのが日課だと話してくれた。 そんな日課は私には必要ない。 体制を建て直し、ヤンの横へと座りなおすと何本目かのお酒へと口をつける。 「ふッ‥‥‥はぁ」 だいぶ酔いが回ってきたのか、体がフワフワと浮いているような感じがした。 勿論、私が酔っているという事は、私よりも飲んでいたヤンは相当酔っている。 ふと、私はヤンの視線に気づきヤンの方へと見る。 すると、ヤンはお酒も飲まずに私の方をジッと見ていた。 「ん?」 っと、私は首を傾げヤンに笑う。 すると、ヤンは首を振り、なんでもないよ、っと私の頭を撫でながら答える。 それが何度かあり、そしてまたヤンは此方を見ていた。 「ん?」 「なんでもないよ」 「本当に?」 「うんw」 ヤンは私の頭を撫でながら、今度は私の頭にキスをしてきた。 何にも気にする事もなく、ただ頭の匂いが気になるなぁ‥‥‥と、そんな事を思っただけだった ヤンの手は私の頭からスルッと降りてきて、私の耳を擽り始めた。 やんわりと擽り、耳の中にまで指が入ってくると、私はくすぐったくて身を捩る。 「んん‥‥‥、くすぐったい‥‥‥ッ」 笑いながらそう訴えるがヤンの指は止まらない。 なんとか指を離そうと手をヤンの手の上に添えた瞬間、ヤンの指が私の指に絡みつく。 「ふぇ‥‥‥?ヤン?」 急に無くなったむず痒さと、指に絡まった指の体温に驚いて顔をヤンの方へと向けると、ヤンの顔は直ぐ傍にあった。 ヤンの真剣な眼差しとガッチリ眼が合う。 「クロ‥‥‥」 熱い呼吸が体を奮わせる。 頭の中は真っ白。 体は欲望に忠実かの様にヤンへと体を近づく。 唇に感じるのは熱い唇。 舌で味わうのはヤンの味。 私達は貪るかのようにキスをした。 始まりと終わりの鐘が鳴る ー08.09.15ー |